縛師 BAKUSHI ・2008年05月31日公開・
あなたは本当のSMを知っているか?
19世紀、嗜虐嗜好であるフランスの小説家、マルキ・ド・サド(「悪徳の栄え」)と、被虐嗜好を持つオーストラリアの小説家、ザッヘル・マゾッホ(「毛皮を着たヴィーナス」)の頭文字を取り、 “SM”という言葉が生まれた。
当時SMといえば、非日常的隠微な欲望を意味した。SM嗜好のある人間は弾圧され、時には処刑される場合もあった。日本にその文化が息づいたのは、明治から大正、昭和にかけて。画家である伊藤晴雨が、縄で女性を拘束し、時には柱から吊した姿を見ながら書いた“責め絵”の存在。そして数々の小説――。その後、昭和時代に、被虐と嗜虐の、変態行為の愉しみを満足させる雑誌「奇譚クラブ」や「風俗奇談」「裏窓」が発売され、SMの世界は形を変えながらも徐々に広がっていく。ピンク映画、ロマンポルノ、裏ビデオ、アダルトビデオ、官能劇画、漫画、小説、イラスト――。密かな趣味を、しかし確実に満足させてきた文化、それがSMだ。
しかし現代の日本では、SMは変態行為としてのプレイから精神論へと変化し、一般的に使用されるまでに至り、身近な言葉として存在している。しかし、あなたは本当にS&Mを理解しているのであろうか。SMがただの嗜虐と被虐という二極化したものではないのだ。ここに、SMの本当の答えが、提示されている。
アブノーマルで、純粋な、愛のかたち
静寂でぴんと張り詰めた空気の中に響き渡るのは、縄のきしむ音と、息づかい、徐々に漏れ聞こえるモデルの声……。モデルたちの声に反応して、縛師は縛り方を変え、モデルの反応を伺う。モデルは縛師の縄に呼応するように、艶やかな表情へと変化していく。
“エクスタシーとは死に向かうこと”。縛られているモデルは、快楽のためならば殺されてもいいとまで考えてしまう。それは、“死”に向かうからこそ知る“生”を感じるからだ。モデルが考える一番快楽を得られる方法を、縛師は見つめ続け、誘うのだ。モデルたちの苦悩の顔から時折見せる、艶やかで官能的な表情。縄が解かれたときの寂しさ。「縛られることで、自分を解放できる」「縛りとは、癒しなのかもしれない」彼女たちはすべてを縛師にゆだねるからこそ、最高の快楽を得ることが出来るのだ。縛師は今日も、優しく抱きしめるように、縄を縛り続ける。
「S&Mの真実を、真正面から捉えたい」
男女間の関係性を描き続けてきた廣木隆一、初のドキュメンタリー!!
緊縛という、日本独特の文化に焦点を当てたのは、『M』『ヴァイヴレータ』など、女性の心理を鋭く描いてきた廣木隆一。廣木監督は、初のドキュメンタリーとなる本作で、今もなお第一線で活躍する、濡木痴夢男、雪村春樹、有末剛という三人の縛師と、彼らが厳選したモデルの間で行われている“対話”を真正面から誠実に見つめ続けた。そして、ついに、縛っていくにつれ、S=サディズムとM=マゾヒズムという従来の意味が見事に転倒する様を、フィルムに捉えることが成功した。第36回ロッテルダム映画祭にてワールドプレミア上映後、多数の国際映画祭にて上映、衝撃と賞賛を受けた本作がいよいよ公開される。
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監督・構成・企画:原作:廣木隆一
企画:成田尚哉
出演:濡木痴夢夫/雪村春樹/有末剛/早乙女宏美/すみれ/卯月妙子