映画ブロイラー

6月 24, 2007

吉祥天女  ・2007年6月30日公開・

Filed under: 邦画 — Bonat @ 2:07 pm

昭和45年春、金沢――。

春日高校「能楽クラブ」に所属する、快活な女子高生、麻井由似子(本仮屋ユイカ)のクラスに、不思議な魅力を持つ転校生がやってくる。その少女の名は、叶小夜子(鈴木杏)。5歳の頃に親戚の家に預けられて以来、この地を離れて暮らしていたが、12年ぶりに実家に戻ってきたのだ。長くツヤのある黒髪、吸い込まれるような瞳……。クラスメイトたちは、たちまち小夜子の虜になる。もちろん由似子も。だが、遠野涼(勝地涼)だけは、小夜子に見つめられると、ただならぬ気配を感じ、教室を出て行く。

小夜子は、“天衣神社”をはじめ、このあたりの土地のほとんどを所有する名家、叶家の娘。下校時になると、書生の小川雪政(津田寛治)が車で迎えに来る、いわば“お姫様”のような存在である。その姿を涼と見ていた、新興の「遠野建設」の息子・遠野暁(深水元基)は、小夜子と政略結婚させられそうになっていると語る。涼と暁は義理の兄弟。7年前に交通事故で両親を亡くした涼は、妹の水絵とともに養子として、親戚の遠野家に引き取られたのだ。暁の父・一郎は、叶家が所有する土地に春日高校の中等部を建設しようとしているが、叶家は借金まみれにもかかわらず買収に応じない。そこで、一郎の妹であり、暁の叔母である浮子が、小夜子と暁の縁組を企て、小夜子を実家に呼び戻したというわけだ。浮子は、小夜子の兄・泰之と結婚し叶家に嫁いだが、すぐに未亡人となり、今は小夜子の祖母・叶あき(江波杏子)の介護をしているのだった。

ある日の放課後、“天衣神社”に遊びに行った小夜子と由似子は、突然不良グループに襲われる。だが、怯えるそぶりもなく、相手を次々と倒していく小夜子。その様子を目の当たりにした由似子は、ますます小夜子に憧れの念を抱く。

小夜子は担任の根津に、神社での一件を報告するが、中等部の教頭に内定しており、スキャンダルを表沙汰にしたくない根津は、小夜子を教室に呼び出し口止めする。……やがて、校内に響き渡る小夜子の悲鳴。シャツを引き裂かれた姿で、部屋を飛び出してきた小夜子は、偶然通りかかった涼の背中に隠れ、その肩にしがみついて震える。小夜子の瞳から放たれる強烈な光に気づく涼。

叶家で、小夜子を披露するお茶会が開かれ、暁と涼、そして由似子もやってくる。妖艶な着物姿の小夜子に、暁は本気で恋心を抱き始めるが、小夜子は軽くあしらい、涼に対して気のあるそぶりを見せる。庭の仮設舞台では、由似子がクラブで練習している能楽『羽衣』が披露され、由似子は感激する。

一方、由似子の姉で、美術学科の大学生・麻井鷹子(市川実日子)は卒業論文のテーマを叶家の財宝研究とし、叶家の歴史と家宝について調べていた。数多くの美術品の中でも、鷹子が最も興味を持っているのは、12年前の“天衣神社”の火事で消失したとされる“天女の衣”――「『天女の衣』に触れた女は幸せになるが、一方、それに触れた男には祟りがある」との言い伝えが残っている幻の逸品だ。調査に協力していた叶家の蔵の管理人・三木は、蔵の中にあった「吉祥天」の絵を眺めていた鷹子に、“叶家は天女の末裔だ”とする天女伝説を語り始める。その話を聞き、心躍らせる鷹子だが、次の瞬間、蔵で根津の死体を発見し絶叫する。

小夜子を可愛がっていた祖母・あきの容態が急変し、この世を去る。葬儀には、暁と涼も参列。その場で暁は涼に、遠野家と叶家が暁と小夜子の結婚に合意したと語る。暁に話しかけられている小夜子の姿を遠くから見守りながら、複雑な心境の涼。涼を見つめる小夜子……。一方、あきを死に追いやった浮子は、策略の片棒を担いでいた小夜子の父・和憲と祝杯をあげる。だが、突如もだえ苦しみだすと、ベランダから転落し、謎の死を遂げるのだった。

遠野家を訪れた小夜子は、応接間で一郎と二人きりになる。帰宅した暁は、小夜子が自分に会いに来たと思い、早速、小夜子のもとへ。それを見届けた涼が自宅を出た途端、部屋から怒号が聞こえてくる。応接間で涼が目撃したのは、胸部を血で染めた一郎と、服を乱され、放心した様子でうずくまる小夜子、そして、血塗られたナイフを握った暁だった。暁は、涼が止めるのも聞かず、弾丸と銃を手に、そのまま部屋を出て行く。

暁は行方をくらましたが、小夜子と暁の婚姻届は既に提出されており、さらに遠野建設の筆頭株主が、小夜子の母・鈴子の名義に変更されていた。小夜子の部屋を訪れた涼は、遠野家を陥れた小夜子に怒りをぶつけ、暁の命令だと言って外に連れ出す。由似子が人質になっていると知り、おとなしく従う小夜子。涼のバイクの後部座席に座った小夜子は、まるで恋人同士のように涼にぴったりと寄り沿う。やがて、二人が由似子の捕らわれている廃墟に着くと、銃を抱えた暁が待ち構えていた。小夜子に銃口を向ける暁。一方、涼は隠し持っていた猟銃を取り出す。そして、小夜子を守るために、暁をめがけて引き金を引く……。

監督・脚本:及川中
原作:吉田秋生
撮影:柳田裕男
美術:中川理仁
照明:松隈信一
編集:阿部互英
音楽:神津裕之
整音:鶴巻仁
出演:鈴木杏 本仮屋ユイカ 勝地涼 市川実日子 深水元基 津田寛治 江波杏子
制作:2007年
制作国:日本
配給:CKエンタテインメント[Cubical]

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