映画ブロイラー

7月 31, 2007

TOKKO -特攻- ・2007年7月21日公開・

悲劇か、狂言的行動か

 太平洋戦争の末期、日本軍は爆弾を搭載した軍用機を搭乗員ごと敵艦に体当たりさせる特攻作戦を繰り出し、何千もの命が散らされていった。戦後、日本ではこうした特攻隊員たちの自己犠牲の精神は、戦争がもたらした大いなる悲劇の一つとして、哀悼の意がささげられている。しかし海外では、これを“KAMIKAZE”なる狂言的な行動の象徴と捉えられることが多く、特に9.11ニューヨーク同時多発テロ事件以降は、自爆テロと特攻隊を結びつけて語られることも増えてきている。

ふたつの国の目をもつフィルムメーカーが見据えた“TOKKO”

 映画『TOKKO 特攻』は、日系二世アメリカ人監督リサ・モリモトの視点から、日本の特攻隊員たちの忘れられない真実に迫る長編ドキュメンタリー映画である。彼女は自分の亡き叔父が戦時中に特攻隊員として訓練を受け、戦後はそれを誰にも語らなかったことを知って衝撃を受け、彼の足跡を追うべく日本を訪れた。海外では訓練を受けた特攻隊員の中に何百人も生存者がいることはほとんど知られていない。なぜ彼らは特攻を志願したのか。自らの命を捨てる行為に恐れはなかったのか。そして叔父はなぜそのことを自分だけの胸の内に秘めて、この世を去ったのか? 彼女は親族や、特攻隊員の生存者たちにカメラを向け、彼かの驚くべき体験談に耳を傾けていく。
 さらにプロデュースと構成を手がけたのは日本映画の英語字幕の第一人者といて知られるリンダ・ホーグランド。日本人のルーツを持つアメリカ人であるリサ、そして日本で生まれ育ったアメリカ人であるリンダ。日本とアメリカ、かつて敵対していた双方の国と大きな繋がりを持つ二人の作り手たちが、それぞれの国に今もなお残る「カミカゼ」伝説に光を当てていく。

特攻とは何かを探るためのユニークなアプローチ

 アメリカ側の取材では、特攻によって沈没した米駆遂艦の乗組員の生存者たち、すなわち特攻隊と直接“出会った”人々に出会うことができた。彼らにとっても忘れ得ない記憶がカラーで残されていた特攻機激突の瞬間を記録したフィルムとともに生々しく語られている。さらにはグラフィックアニメーションによるさまざまな映像的仕組みを交えながら、特攻とは一体なんだったのかが浮き彫りにされていく。
 完成した本作は、カナダのトロントで行われた北米最大のドキュメンタリー映画祭でプレミア上映され、世界中の観客たちの深い衝撃と反響を呼び、急遽日本公開が決定した。

世界、そして日本の危機に向けてのメッセージ

 戦後六十年を過ぎ、当時の証言者たちも高齢となって、次第にその記憶が人々から薄れてゆくとともに、世界中が次なる戦争の危機に常に見舞われている現在、日本でも平和憲法の改正が唱えられている。こうした動きはかつて日本が軍事国家の道を進んでいった経緯と似てはいないだろうか。
 それまで特攻をテロリストと同時の自滅的な狂人“KAMIKAZE”と重ねるアメリカの風潮を身をもって感じてきた監督とプロデューサーが対峙する特攻の真実は、日米両国の視点から第二次世界大戦の歴史を再考するための、戦後しか知らない世代が未来を生きていくための、貴重な手がかりを伝えている。

監督・プロデューサー:リサ・モリモト
プロデューサー:リンダ・ホーグランド
エグゼクティブ・プローデューさー:寺尾のぞみ ジョシュア・レビン
アソシエート・プロデューサー:服部史子
撮影:フランシスコ・アリワラス
編集:マヤ・スターク
美術:ジョー・ウー
アニメーション:ジェフ・カストロ
音楽:エクストリーム・ミュージック
作曲家:松岡碧郎
配給:シネカノン

公式サイト

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